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従業員が休職した際の対応:自然退職規定は有効か?

  • 真介 住
  • 24 時間前
  • 読了時間: 3分
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従業員の休職は、企業にとって対応に悩ましい問題の一つです。特に、休職期間満了後も復職できない場合、就業規則の自然退職規定を適用して退職扱いにすることが適切かどうか、多くの企業が判断に迷います。しかし、安易な自然退職扱いは従業員とのトラブルや訴訟リスクにつながる可能性があります。今回は、休職期間満了後の対応における注意点と、裁判例の考え方について解説します。


自然退職規定とは?


就業規則に定める自然退職規定とは、休職期間が満了しても復職ができない場合など、特定の条件を満たしたときに雇用契約が自動的に終了するという内容のものです。これは、企業が個別に解雇手続きを行うことなく、労働契約を終了させるための規定です。

しかし、この規定は、従業員の疾病や負傷を理由とする解雇権の濫用を避けるための一種のルールとして機能します。したがって、自然退職規定を適用するためには、その前提として**「解雇が有効な状況」**であることが必要とされます。


自然退職扱いに潜むリスク


自然退職規定があるからといって、無条件に適用できるわけではありません。不適切な適用は、解雇権濫用とみなされ、法的に無効となる可能性があります。


1. 復職可能性の判断


休職期間満了時に従業員が復職可能かどうかは、医師の診断書だけで判断すべきではありません。企業側は、産業医との面談、本人の業務遂行能力、従事していた業務内容などを総合的に考慮し、客観的かつ慎重に判断する必要があります。


2. 企業側の配慮義務


企業には、従業員が円滑に職場復帰できるよう、可能な範囲での配慮義務があると考えられています。例えば、配置転換や軽易な業務への変更など、復職を支援する措置を検討せずに自然退職扱いとすることは、企業側の義務違反とみなされる可能性があります。


裁判例の動向


裁判所は、自然退職の有効性について、企業が**「解雇権濫用」**に当たらないかという視点から厳格に判断する傾向にあります。


【裁判例のポイント】


  1. 休職期間満了時の客観的な復職可能性の有無

    • 単に医師の診断書だけでなく、休職事由となった傷病の回復状況や、休職期間中の状況(通院、リハビリ等)を総合的に判断します。

  2. 企業が復職に向けた努力を尽くしたか

    • 休職期間中の従業員への連絡や、復職に向けた調整、配置転換の可能性など、企業が十分な配慮を行ったかどうかが問われます。

  3. 就業規則の規定内容の合理性

    • 自然退職規定が、休職期間の長さや復職の条件など、労働者の権利を不当に制限するものでないかどうかも考慮されます。

例えば、東京地裁平成27年2月25日判決では、休職期間満了後も復職が困難と見込まれた従業員に対し、自然退職規定を適用して退職扱いとした企業の主張が認められています。しかし、このケースでは、企業側が産業医との面談を複数回実施し、従業員の現状や復職可能性について詳細に検討した上で判断を下している点が重要です。


トラブルを避けるための対応策


トラブルを未然に防ぐためには、以下の点に留意することが重要です。

  • 就業規則の明確化:休職制度や自然退職規定を明確に定め、従業員に周知徹底します。

  • 個別事案での慎重な判断:安易な判断は避け、産業医や弁護士などの専門家に相談し、復職可能性を慎重に見極めます。

  • 配慮義務の履行:可能な範囲で、業務内容の変更や配置転換を検討するなど、復職支援に向けた努力を行います。

  • 書面での記録:休職中の連絡、面談記録、医師の診断書の授受など、全てのやり取りを書面で記録に残します。

休職した従業員への対応は、企業のコンプライアンス意識が問われる重要な局面です。個々の事案に合わせた丁寧な対応が、企業と従業員双方にとって円満な解決につながります。ご不明な点がございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。

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