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民法改正② 法定利率

 今回は,民法(債権法)改正の内,法定利率制度の改正について触れたいと思います。

 旧法では,法定利率は5%とされていました。

 しかし,年5%という利率が,不景気や金融緩和の影響もあって低金利が長く続く状況を反映しておらず,法定利率を下げるべきとの議論が起こりました。

 そこで,今回の改正においては,今後の金利の変動等に適切かつ柔軟に対応するため,変動制が採用されました。

 なお,今回の改正に伴い,商事法定利率に関する規定(旧商法514条)は削除されました。

 変動制の内容について説明します。

① 当初は年3%の利率で開始する(404条)。

② 3年を一つの「期」とし,3年ごとに利率を見直す(404条3項)。

③ 見直しに当たっては,当期の基準割合(過去5年間の短期貸付けの平均利率の 平均値)と法定利率に変動があった期のうち直近のものにおける基準割合とを比較し,1%以上変動した場合には,1%単位(1%未満の単数は切捨て)で,法定利率を増減する(404条4項,5項)。

 基準割合は法務大臣が告示することとされています(404条5項)。

 ところで,利息を生ずべき債権について当事者間に利率の合意がない場合には,その利率は,利息の弁済期ではなく「その利息が生じた最初の時点における法定利率」となっています。

 その後法定利率が変動しても,途中で適用される法定利率が変更になることはありません。

 最後に実務への影響ですが,金銭消費貸借契約のように契約により利息が付される場合,当事者間の合意で利率を定めることが通常ですから,法定利率が変動制に移行したとしても,このような取引への影響は限定的とみられます。

 しかし,約定利率が法定利率を超えない場合の金銭債務の不履行に伴う遅延損害金や,不当利得における悪意の受益者に対する利息請求権,加えて,損害賠償額の算定に伴う中間利息の控除については,大きな影響を及ぼすものと考えられます。

 さらに,法定利率の変動があった場合に,対象となる債権が変動日の前後のいずれに発生したかにより,適用される利率が異なることになるので,債権者の債権管理に影響するという指摘もされています。

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