「自己破産は絶対にやめろ?」
- 真介 住
- 2025年12月18日
- 読了時間: 3分

近年、SNSやセミナー等において、「経営者は自己破産をするべきではない」「自己破産は割に合わない」「破産しなくても道はある」といった趣旨の発信を目にする機会が増えています。
これらの発信は、事業の継続や廃業に悩む経営者の心理に寄り添おうとする点では、一定の意義があるように見えます。
しかし、法的観点から見ると、非常に注意を要する考え方でもあります。
本記事では、そうした主張の背景を整理したうえで、なぜ「自己破産を一律に否定する考え方」が危険なのかを、弁護士の立場から解説します。
1 よく見かける主張の整理
こうした情報発信では、概ね次のような論調が用いられます。
自己破産をすると、財産がほとんど残らない
支払先や支払順序を自分で決められなくなる
経営者としての信用が失われ、再起が難しくなる
破産以外にも、会社を畳む方法は存在する
だから、自己破産は「絶対に避けるべきだ」
一見すると、経営者思いの助言のように聞こえるかもしれません。
2 「破産以外の選択肢がある」こと自体は正しい
まず前提として、自己破産以外の整理方法が存在すること自体は事実です。
例えば、
任意整理・リスケジュール
事業譲渡や事業縮小
私的整理
特別清算
など、状況によっては破産以外の選択肢が検討可能なケースもあります。
「破産しかない」と思い込む必要はありませんし、早期に専門家へ相談することで選択肢が広がることも確かです。
3 しかし、「自己破産は絶対にやめろ」という断定は危険です
問題は、ここからです。
⑴ 破産が「最も安全な選択肢」である事案は多数存在します
実務上、
すでに支払不能に陥っている
金融機関が任意整理に応じない
税金や社会保険料の滞納が多額にある
代表者個人が多額の連帯保証債務を負っている
といったケースでは、破産以外の方法が現実的に存在しないことも少なくありません。
このような状況で無理に破産を回避しようとすると、
偏頗弁済
詐害行為
代表者個人への責任追及
場合によっては刑事責任
といった、より深刻な法的リスクを招くことがあります。
⑵ 自己破産は「失敗」ではなく、法が用意した正規の制度です
自己破産は、
経営者を罰するための制度ではありません
社会的に許容された「清算と再出発」のための制度です
適切な時期に、適切な手続で破産を行うことは、経営者自身を守るだけでなく、債権者間の公平を確保するという重要な役割も果たします。
⑶ 成功体験の一般化は非常に危険です
「自分は破産せずに乗り切れた」という体験談が語られることもあります。
しかし、
負債額
資産状況
税・社会保険の有無
家族構成
金融機関との関係
が異なれば、結果もまったく異なります。
一個人の成功例を、他の経営者にも当てはまる一般論として受け取ることは危険です。
4 当事務所が最も重視していること
住法律事務所では、次のように考えています。
自己破産は「最終手段」ではあるが、決して「最悪の選択肢」ではない。 重要なのは、・破産を回避できる状況なのか・破産を選ぶことが最も安全なのかを、個別具体的事情に基づいて判断することである。
その判断は、必ず弁護士を含む専門家の関与のもとで行う必要があります。
5 経営者の方へ
事業の継続や廃業に悩んでいるとき、断定的で力強い言葉は、心を軽くしてくれるかもしれません。
しかし、
「絶対に〇〇するな」
「これしか道はない」
という情報ほど、慎重に受け止める必要があります。
自己破産を選ぶべきか、避けるべきかは、ネット上の一般論では決まりません。
もしお悩みであれば、できるだけ早い段階で、専門家にご相談ください。

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